労災と損害賠償

労災の発生に、事業主(会社)の義務違反ないし落ち度が存在する場合には、労働者は事業主に対して損害賠償請求をすることが出来ます。

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労災申請+損害賠償という選択肢

労災保険による給付は、労災で受けた損害の全てを補償するものではありません。
休業損害の4割、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料などについては、労災保険では給付されないのです。

そこで、労災給付で不足する損害については、事業主(会社)に対する請求を検討することになります。

安全配慮義務違反

労働者災害補償保険

事業主は労働者に対し、就業場所や使用する機器や器具の管理など、労働者の生命や身体を保護するように配慮し労働者の安全を確保しなければならない義務を負っています。

この事業主の負う義務を安全配慮義務と言います。

そのため、労働者が労務を提供している際に、生命や身体に損害が発生した際には使用者に対して損害賠償請求を検討することができます。

義務違反を立証する必要がある!

事業主への請求の際、労働者は「業務と災害の因果関係・(労働)契約上の義務違反の事実」を立証する必要があります。
一方、事業主は「事業主には責任がないこと」を立証しなければいけません。

このように、安全配慮義務違反などについての立証は必要となってきますが、労災保険給付が十分でないことを考えると、事業主(会社)に対する請求は安易にあきらめるべきではありません。

安全配慮義務違反ではなく、不法行為を根拠として損害賠償請求を行うことも可能です。

安全配慮義務違反による損害賠償

事業主は、労働者が就労中に事故に遭わないように、作業管理や労働環境設備の整備を行わなければなりませんし、機械を使用する際にも労働者に危険が生じないように努めなければなりません。

事業主がこれらの安全配慮義務を怠っていた場合には、事業主に対し安全配慮義務違反として損害賠償を行うことが出来ます。

近年では、上司からのパワーハラスメントや、長時間労働による精神疾患の発症や自殺、過労死に対して、安全配慮義務違反による損害賠償請求が増加しています。

過労死や過労自殺に対しては、直前の労働時間が非常に重要であるほか、労働者の地位や職務内容、業務体制、人員不足の有無など就労実態が重要になってきます。

不法行為による損害賠償

一般的な不法行為に基づく損害賠償責任は、故意または過失によって他人の権利を侵害した者が、生じた損害を賠償する責任を負います。

事業主に対し不法行為に基づく損害賠償責任を請求する要因としては、事案に応じて、民法709条を根拠とする場合と、使用者責任(民法715条)を根拠とする場合があります。

「使用者責任」とは?

使用者責任とは、事業主は、従業員が業務の執行において第三者に加えた損害を賠償する責任があることを言います。
近年では、セクハラ事案において使用者責任を問われることが増加しています。

労災に精通した弁護士が執筆しています!

黒田 修輔のアバター 黒田 修輔 代表弁護士

私を育ててくれた故郷である西宮に貢献したい。それが私の気持ちです。

これまで多くの人身傷害事案で培った「ケガ」に関する医学的な知識をはじめ、損害賠償、示談交渉のノウハウを武器に、身体的・経済的な苦痛を減らし、賠償額の適正化をめざして日々の業務にあたっております。

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