休業中の補償

業務または通勤の際に負傷や病気になったことで出勤できず、賃金を得ることができなくなった時には、労災保険から「休業補償給付」が支給されます。

休業補償給付とは、休業中の賃金に代わる補償です。

ただし、給料全額が支払われるわけではないので注意が必要です。
今回は労災の休業補償のポイントや注意点について、弁護士が解説します。

目次

1. 労災の休業補償給付とは

労災のけがで会社に行けないために、収入を得られなくなった場合には、労災保険から休業補償給付を受け取ることができます。

労災でけがや病気になると、いつ頃・どれくらい回復するのだろうかという心配と同時に、回復までの生活費はどうなるのかという心配が生じます。

安心して療養するためにも申請を

労働者災害補償保険

収入を得るために、無理に復職して十分な治療を受けなかったために、余計に治療期間が延びたり、二次災害に遭ってしまうというケースもあります。

しかし、休業補償給付を受け取ることができれば、有給を使わずに、欠勤をしていても治療費とは別に給付金を受け取ることができます。

そのため、安心して休業し入通院治療を続けることが可能となります。

2.休業補償給付のポイント

2-1.休業補償給付で支払われる給付金は全額ではない

休業補償給付によって支払われるのは、賃金の全額ではありません。

給付には、「休業補償給付」と「休業特別支給金」があります。

「休業補償給付」は給付基礎日額(労災直前3カ月間の平均賃金)の60%×休業日数、「休業特別支給金」は給付基礎日額の20%×休業日数、という支給額になりますので、合計でも給与の80%相当の金額の支給になります。

2-2.有給との関係

休業補償給付を受け取るケースでも「有給」を使うことは可能です。
有給は減ってしまいますが、休業補償給付からは賃金の80%までしか支給されないため、有給の利用によってさらに賃金を得るというメリットはあります。

2-3.申請方法

休業補償給付を受け取りたいときには以下のように進めましょう。

①会社へ報告

まずは労災事故が発生したことを会社に報告します。
労災申請用紙(様式第8号、通勤災害の場合は様式第16号の6)を作成して会社に証明をもらいましょう。
会社が作成してくれる場合もあります。

②病院で診察を受ける

病院に行って診察と治療を受け、労災の申請用紙に証明をもらいましょう。

③労基署へ申請書を提出する

作成した休業補償の申請書を労基署に提出します。
その後審査があり、給付の決定があれば休業4日目からの休業補償金が支給されます。

休業が長期にわたる場合は、1か月ごとの請求が一般的です。
なお、休業特別支給金の支給申請は、原則として休業(補償)給付の請求と同時に行うこととなっており、様式も同一です。

3.休業補償級の注意点

3-1.休業補償給付が支給される期間は全期間ではない

開始時期

医師と後遺障害

休業補償給付が支給されるのは、休業後4日目からです。

休業の初日から第3日目までを待期期間といい、当初の3日間は休業補償給付を受けることができません。

当初3日分については、「労働基準法」に基づき会社に補償すべき義務(平均賃金の60%)が定められていますので、会社へ請求しましょう。

ただし、通勤災害の場合には会社に補償義務が認められていないので注意が必要です。

また、通院のため労働時間のうち一部を休業した場合には、実際に労働した部分に対して支払われる賃金額を控除した額の60%の額が支給されることとなります。

終了時期

休業補償は、基本的に労働者が再度働けるようになるまで支給されます。
ただし完治しなくても症状固定して治療を終了すると、休業補償の支給も終わります。

症状固定後に後遺障害が残った場合には別途労基署に申請をして後遺障害認定を受けると、障害補償給付を受けることができます。

3-2.賃金を受け取っていると休業補償給付を受けられない

休業補償給付は、会社から給料をもらっている場合には給付されません。

3-3.請求に関する時効

休業補償給付は、労働することができない日ごとに請求権が発生します。
そして、その翌日から2年を経過すると、時効により請求権が消滅しますので注意が必要です。

労災に遭い、働けなくなった労働者の方々にとって、休業補償は非常に重要です。
申請方法がわからない、会社が対応してくれないなどでお困りの方は、お気軽に弁護士までご相談下さい。

労災に精通した弁護士が執筆しています!

黒田 修輔のアバター 黒田 修輔 代表弁護士

私を育ててくれた故郷である西宮に貢献したい。それが私の気持ちです。

これまで多くの人身傷害事案で培った「ケガ」に関する医学的な知識をはじめ、損害賠償、示談交渉のノウハウを武器に、身体的・経済的な苦痛を減らし、賠償額の適正化をめざして日々の業務にあたっております。

目次